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最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1468号 判決 1949年2月17日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意について。

論旨は、要するに、第一審及び原審において被告人からその利益のために證人尋問の申請をなしたのであるが、両裁判所ともこれを却下し、又原審において勾留の執行停止を申請したのであるが、原審はこれに對し何等の決定も通知をもしないのである。これは憲法に違反するというに歸着する。

しかし、記録を精査するも、被告人が第一審及び原審において證人尋問申請をなした形跡は認められない。又勾留の執行停止は、裁判所が職權を以てなすものであり、被告人から裁判所に對し、それを要求する權利は訴訟法上認められてはいないのである。從って、被告人から裁判所に對し執行停止の申請をなしても、それは唯、裁判所の職權発動を促す意味を有するに過ぎないのであって、裁判所は必ずしもその申請について裁判をなし、これを告知する訴訟法上の義務はないのである。本件において被告人が昭和二三年七月九日原審に對し勾留執行停止の申請をなしたこと及び原審が該申請に對し同年八月二六日なお勾留繼續の必要があるとの理由により、これを却下する旨の決定をなしていることは記録上明白である。尤も、この決定が被告人に告知されたことについては記録上必ずしも明確ではないが、その告知の有無に拘わらず、何等被告人の訴訟上の權利は勿論憲法上の權利が侵害されるものでないことは、前段の説示により明らかであろう。原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由なきものである。

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔)

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